【物理】『時間とは何か―なぜ前に向かって流れるのか』The Conversation 2016/1/23

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What is time – and why does it move forward?
Author
Thomas Kitching
https://theconversation.com/what-is-time-and-why-does-it-move-forward-55065

時間が逆行することを想像してみてほしい。年を取る代わりに若くなり、長い若返りを経て学んだことをすべて忘れながら、やがて生まれる以前の時までさかのぼっていく。これはSF作家フィリップ・K・ディックの小説での描写である。だが時間の方向というのは、宇宙論者たちが格闘している問題の一つでもある。

我々は、時間が決まった方向を持っているという考えを当然のことと思っているが、物理学者はそうではない。殆どの物理法則は「時間的に可逆」である。ではなぜ時間はいつも前に向かって流れるのだろうか?そしてこれは、ずっとこのままなのだろうか?

時間に始まりはあるのか

時間についてのいかなる普遍的な概念も、最終的には宇宙の進化それ自体に基礎付けられていなければならない。あなたが空を見上げるとき、あなたは過去の事象を目撃していることになる。その情報が我々の目に辿り着くまで何光年もかかるからだ。実は最も単純な観測事実さえ、宇宙時間の理解の助けとなる。夜空が暗いということもその一例である。もし宇宙が無限の過去を持ち、無限に広かったとすれば、夜空は無限の過去から存在する宇宙の中の無限の星々からの光に満たされ、完全な輝きを放っていることになる。

長い間、かのアルバート・アインシュタインも含めた科学者たちは、宇宙は静的で無限であると考えてきた。その後観測によって、宇宙は実際には膨張しており、その速度は増していることが示された。これは、宇宙はビッグバンと呼ばれるよりコンパクトな状態から生まれたことを意味し、時間には始まりがあったことを示唆している。実際、十分古い光を調べることで、宇宙マイクロ背景放射と呼ばれるビッグバンの残光を観測できる。これは、宇宙の年齢を決定するための最初のステップとなった。(以下参照)

だが障害もある。アインシュタインの特殊相対性理論によれば、時間は…相対的である。あなたが私に対して速く運動すればするほど、あなたにとっては、私が知覚するよりもゆっくりと時間が進む。よって、膨張する銀河や、自転する星、渦巻く惑星などによって構成される宇宙の中で、時間の経験はそれぞれ異なってくる。過去、現在、そして未来は相対的なのだ。

では、すべてのものが合意できる普遍的な時間は存在するのだろうか?

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The universe’s timeline. Design Alex Mittelmann, Coldcreation/wikimedia, CC BY-SA

宇宙は平均すればどこも一様で、どの方向も同じように見えるということから、「宇宙時間」というものは存在ということがわかる。それを測るために必要なことは、宇宙マイクロ背景放射の性質を調べることである。宇宙論者たちは、宇宙の年齢、すなわちその宇宙年齢を決定するためにこれを用いてきた。それにより宇宙は137.99億歳であることがわかっている。

時間の矢

よって、時間はおそらくビッグバンの中で始まっただろうことがわかってる。しかし、まだやっかいな問題が残っている。すなわち時間とは何なのか?ということだ。

この問題の包みを拡げてみるには、時空の基本性質を調べる必要がある。空間次元では、あなたは前にも後ろにも進むことができる。通勤者は毎日経験してるだろう。だが時間は違う。決まった方向があり、いつも前にだけ進み逆戻りすることは決してない。ではなぜ時間次元は不可逆なのだろうか?これは物理学における主要な未解決問題の一つとなっている。

何故時間それ自体が不可逆なのか説明するには、自然界の中の同じように不可逆なプロセスを見出す必要がある。物理学の中(そして日常生活の中でも!)にある数少ないそのような概念の一つは、物事は時間が立つに連れ「整然さ」が失われていくというものである。我々はこれを、物事の秩序を定量化するエントロピーと呼ばれる物理的性質を用いて記述する。

始め、全粒子が角の一箇所に集まっている気体の入った箱を想像してみてほしい(秩序だった状態)。時間が立つに連れて粒子は箱全体を満たすように自然に広がっていく(無秩序な状態)―そして、粒子を元の秩序だった状態に戻すにはエネルギーを必要とする。

これは不可逆だ。それはオムレツを作るために卵を割るようなものだ―ひとたびフライパン中に広がれば決して元の形には戻らない。これは宇宙でも同じだ。発展するにつれて全体のエントロピーは上昇する。

しかし、無秩序さを好む自然の傾向がありながら、なぜ宇宙は秩序だった状態から始まったのだろうか?これは未だに謎である。一部の研究者たちはビッグバンが始まりではなく、時間が異なる方向に流れる「並行宇宙」が存在するのではないかと主張している。

関連:【物理】『どのようにして並行宇宙で時間が逆行しうるのか』IFLScience 2016/1/24

時間に終わりはあるのか

時間に始まりはあったが、終わりがあるかどうかは加速膨張を引き起こしているダークエネルギーの性質に依存する。この膨張率は宇宙を引裂き、ビッグリップを引き起こすか、ダークエネルギーが衰退し、ビッグバンを巻き戻しビッククランチを起こすかもしれない。そうでなければ、宇宙は単純に永遠の膨張を続ける。

しかし、これらの未来のシナリオは時間を終わらせるのだろうか?量子力学の奇妙な法則によれば、小さなランダムな粒子が瞬間的に真空から飛び出すことがありうる。これは素粒子物理の実験で絶え間なく観測される。ダークエネルギーはこのような「量子的ゆらぎ」を引き起こし、新たなビッグバンを引き起こすことで我々の時間の終焉とともに新たな時間を始めることが可能ではないかと主張するものもいる。これは非常に推論的で、非常に実現しがたいように思えるが、わかってることはダークエネルギーについて理解できた時が、宇宙の運命を知ることができる時であるということだ。

では、最も考えられる結果はどんなものだろうか?それは時間のみぞ知ることだろう。

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