【その他】『科学者が誤用をやめてほしいと願っている10の科学概念』io9 2014/6/16 【科学一般】

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10 Scientific Ideas That Scientists Wish You Would Stop Misusing
Annalee Newitz
6/16/14 1:25PM
http://io9.gizmodo.com/10-scientific-ideas-that-scientists-wish-you-would-stop-1591309822


多くのアイディアが科学の世界を離れ、日常語の中に浸透している。そして残念なことに、それらがいつも正しい意味で使われているわけではない。我々はある科学者のグループに、もっとも広く誤用されていると考えられる科学用語は何かと尋ねた。以下はそのうちの10個である。

1. 証明

物理学者Sean Carrollはこう述べている:

私は「証明」という言葉こそ、あらゆる科学概念のなかでも最も広く誤用されている概念だと考えている。それには専門的な定義(ある仮定からある結論が導かれるということを論理的に示す事)があり、単純に「何らかの事柄に対するれっきとした証拠」に近い意味で使われる日常会話での用法とは大きな不一致がある。科学者はより強い定義を念頭において語ることが多いため、科学者が語ることと一般の人の受け取ることには食い違いがある。それに、その定義では科学者はいかなるものも証明しない!だから「我々が別の種から進化したということの証明は?」とか「気候変動が本当に人間活動によって引き起こされてるって証明できる?」などと聞かれたら、「もちろん出来るさ」という代わりに、口ごもるばかりになってしまう。科学はいかなるものも完全には証明せず、より多くの信頼に足り、包括的ではあるが、常に更新され改善されうる可能性を持った理論を生み出し続けるだけであるという事実は、科学がこれほど成功を収めてきた理由の重要な一側面なのだ。


2. 理論

天体物理学者Dave Goldbergは理論と言う用語に関するある理論を持っている:

一般の人々(それに加えあるイデオロギー的な目論見を持った人々)は「理論」という言葉を「アイディア」や「仮定」と同義であるかのように捉えている。そうではない。科学理論というものは、手元の根拠や、誰かによって実行されうる実験により反証される可能性を秘めた検証可能なアイディアの全体システムのことだ。最良の理論(私なら特殊相対性理論、量子力学、進化論を含める)は、Einsteinよりも自分の方が賢いと証明したがる人たちや、その形而上学的主張が自分たちの世界観にとっては不都合だと考えるものたちからの、百年やそれ以上に渡る挑戦に耐えてきた。そうして理論は鍛えられる。だが際限なくではない。理論はその建物全体を崩壊させることなく、特定の細部において不完全さや誤りが見いだされることがありえる。進化論それ自体も、長い年月をかけ適応してきた。だがそれと認識されなくなるほどの変化ではない。「単なる理論にすぎない」という言葉には、科学理論はささいなものであるという含みがあるが、実際にはそうではない。


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3.量子的不確定性や量子論の奇妙さ

Goldbergは「理論」の場合より有害な誤用があると付け加える。それは物理学の概念をニューエイジやスピリチュアルなどの目的で利用する場合である

この誤用はある系統のスピリチュアリストや自己啓発家による量子力学の身勝手な悪用であり、忌々しい映画『What the Bleep Do We Know?(邦題:超次元の成功法則~私たちは一体全体何を知っているというの!?~)』が典型例である。量子力学はよく知られる通り、観測という行為が核心的となる。ある観測者が位置や運動量やエネルギーを測定することで「波動関数が非決定論的に収縮」する(私は最初のコラムの一つ『波動関数を収縮させるのにどれだけ賢い必要があるのか』でも扱っている)。しかし、宇宙が決定論的ではないからといって、あなたがそれをコントロールする者となるわけではない。量子的不確定性や量子論の奇妙さが、魂や人が宇宙をコントロールできるという考え、そしてその他の似非科学の系統と結びつく密接さは驚くべきもの(そして率直にいて憂慮すべきほど)である。結局は我々も量子的な粒子(陽子、中性子、電子)で構成されており、量子宇宙の一部なのだ。物理学はみんなクールだという意味では、当然それもクールな話だ。


4. 学習 vs 生得

進化生物学者Marlene Zukはこう言う:

私のお気に入り(の誤用)は、振る舞いが学習して得るものなのか生得的なものなのか(learned vs. innate)という考えである。ある振る舞いについて語るときよく聞かれる質問の一つ目は、それが「遺伝的」なのかそうでないのか、というものである。だがそれは誤解である。なぜなら、全ての形質はいつだって、遺伝子からのインプットと、環境からのインプットの結果だからである。形質それ自体ではなく、形質の差異だけが、遺伝的もしくは学習によるものとなりうる。例えばあなたに一卵性の双子がいたとして、異なる環境で育ち、(異なる言語を話すなどの)異なる行動をしたとしよう。その場合、その違いは学習によるものだ。だが、フランス語であれイタリア語であれなんであれを話すことは、完全に学習ではない。なぜなら、話すことそれ自体には、特定の遺伝的バックグラウンドが必要なことは明らかだからである。


5. 自然

合成生物学者Terry Johnsonは、人々のこの言葉の意味の誤解に本当に本当にうんざりしている:

「自然」とは、分析がほぼ不可能なほど、非常に多くの文脈で非常に多くの異なる意味で用いられる言葉である。人類の影響のためだけに存在している現象と、そうでない現象を区別するという、そのもっとも基本的な用法は、人類は何らかの形で自然とは切り離されており、我々の活動は、例えばビーバーやミツバチなどと比較して、非自然または不自然であるということを仮定している。

食品が「自然」であるというときは、さらにつかみどころがない。それは異なる国で異なる意味を持っている。米国においては、FDAは自然食品の有意味な定義には見切りをつけている。カナダでは、販売前に様々なものを添加したり取り除いたりしなければ、トウモロコシを「自然」食品として販売できる。しかし、トウモロコシ自体が、人類の何千年にもわたる選択交配による賜物であり、人の手が加えられなければ存在しなかった植物である。


6. 遺伝子

しかし、Johnsonは遺伝子と言う言葉の用法に関してさらに大きな懸念を抱いている:

「調節領域、転写領域、そして/もしくは、その他の機能的配列領域に関連する遺伝の単位に対応するゲノム配列の特定可能領域」という定義が与えられるために、25人の科学者による2日間の議論が行われた。これは、遺伝子とはDNAの離散的な断片で、我々が指さし「これは何かを生成するか、その調節をするものだ」と言えるものである、という意味である。この定義は相当に融通の利くものである。DNAの大部分が何の機能も持っていないと考えられていたのはそう遠くない過去のはなしである。我々はそれを「ジャンクDNA」と呼んでいたが、その多くがそれまで一見明らかではなかった役割を持っていることがわかってきている。

「遺伝子」は概して「のために」という言葉に先行して誤用されることが最も多い。これには2つの問題がある。我々がみなヘモグロビンのための遺伝子を持っている。しかし、誰もが鎌状赤血球症ではない。異なる人は異なるヘモグロビン遺伝子の型を持っている。それは対立遺伝子と呼ばれる。鎌状赤血球症に関係するヘモグロビン対立遺伝子もあるし、そうでないものもある。よって、対立遺伝子の族を指すある遺伝子が、もし何らかの疾患や障害に関係していたとしても、関連するのはその少数の一部なのである。遺伝子が悪いのではない。信じてほしい、特定の型は問題となりうるが、ヘモグロビンがなければ長い人生は送れない。

私は、遺伝的変異が何かと相関している場合、それはその何かの「ための遺伝子」であるという考えが一般に広まっていくことを最も懸念している。「この遺伝子は心臓病の要因となる」と言われるとき、通常、「この対立遺伝子をを持つ人は、理由はわからないがわずかに心臓病を起こす可能性が高く、おそらくこの対立遺伝子には、研究していないために我々はまだ理解していない補填的な利益がある」というのが実際のところだ。


7. 統計学的に有意

数学者Jordan Ellenbergはこの考えについての誤解を正したいと思っている:

「統計学的に有意(Statistically Significant)」というのは、科学者たちが撤回し名前を付け直すチャンスが欲しいと考えているフレーズの一つである。「有意」であるということは重要であることを示唆しているが、英国の統計学者R.A. Fisherによって発展させられた統計的有意性検定は影響の重要さやサイズは測らない。それは、最も鋭い統計ツールによって、ゼロから識別可能であるかを検定するに過ぎない。「統計的に顕著(Statistically noticeable)」とか「統計的に識別可能(Statistically discernible)」などのほうがだいぶマシだろう。


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8. 適者生存

古生態学者Jacquelyn Gillは、人々は進化理論のいくつかの基本的な考えを誤解しているという:

そのリストの一番上に来るのは「適者生存」だ。まず、これらはダーウィンの実際の言葉ではない。次に、「適者」という言葉の意味が誤解されている。関連して、進化は進歩的であり、方向性を持つ(自然淘汰を理解しない人々による、生物の身体に計画性さえあるという考えもある)、またはすべての形質は適応的である(性淘汰という例がある!ランダムな変異もである)などを含めた、進化論一般に関する大きな誤解がある。

最適者は最も強い者も最も賢い者も意味しない。それは、単純にある生物がその環境に最も適応しているという意味であり、「最も小さい」とか「最もぐにゃぐにゃ」という意味から、「最も有毒」とか「一週間水なしで生きることが最も得意」とかの意味にもなりうる。それに加え、生物はいつも我々が適応として説明できる形に進化するとは限らない。彼らの進化経路はランダムな変異の影響が大きいとか、形質がその種の他の構成員にとって魅力的であるなどの場合もありうる。


9. 地質年代

15,000年以上も前に存在した更新世の環境を中心に研究しているGillは、あまりに少数の割合の人しか地球のタイムスケールについて理解していないように思えることについても、うろたえさせられると語る:

私が遭遇する問題は、一般の地質学的タイムスケールに関する理解の欠如である。有史以前の歴史はみな圧縮されて頭の中に入っており、20,000年前には全く異なる種たちが生息していた(そうではない)とか、さらには恐竜までも存在していた(違う、違う、違う)と考えているものもいる。小さなおもちゃの恐竜のプラスチックチューブ(訳注:チューブ状の入れ物に小さなオモチャがたくさん入ったもの)に、原始人やマンモスが一緒に入ってることも状況を悪くしている要因だろう。


10. オーガニック

昆虫学者Gwen Pearsonは、「オーガニック」という言葉に「同行する」用語の群れが存在するという。「ケミカルフリー」や「自然」などである。彼女はこれらの言葉の誤解の深さにうんざりしている。

(すべての)食べ物は炭素などを含むためオーガニックなのだが、このような専門的な誤りをおかしていることにはまだ我慢できる。私の懸念は食品や製品の製造の違いを無視したり過小に考えたりすることだ。

自然で「オーガニック」であっても、非常に危険なこともありうるのだ。

一方で、「化学合成」され人工的に製造されたものでも、安全なこともありうる。そしてより優れた選択の場合もある。もしあなたがインスリンを打っているなら、まずそれはGMOバクテリアによってつくられたものだろう。そしてそれにより多くの命が救われている。



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