【物理】『重力波とは何か』ScienceTime 2016/1/13

重力波検出のうわさをうけて

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・重力波とは何か

電荷や電流を源(ソース)として、電場や磁場が生じる。これらが波として伝播することでソースの無い場所にまで影響を及ぼすことが出来る。我々はこの波を「電磁波」―我々の目で見える波長領域のものであれば「光」―と呼んでいる。

一般相対性理論によって、重力の理論も電磁気と同じように、質量やエネルギーや運動量をソースとした場の理論として記述される。その重力の場(重力場)の変化も電磁波と同じように波として時空を伝播していく。これが重力波である。

(一般相対性理論に関する解説は『ニュートンからアインシュタインへ:一般相対性理論の起源』The Conversation 2015/11/10など)

重力波はアインシュタインの重力場の方程式から理論的に予言されているが、間接的な証拠はあれど、まだ(2016/1/13時点で)直接検出はされていない。

物理学上の最も重大なミッションとして掲げられ、各国が大きな予算を使って研究を進めていながら、未だ検出に成功していない理由は、重力のその弱さによる。

重力は電荷同士に働く力であるクーロン力より、36桁も小さいのだ(なぜ他の力に比べ重力がこれほど小さいのかということ自体も最も重要な未解決問題の一つとして研究されている)。したがって、それだけ物質との相互作用が弱く、透過してしまうため検出が困難なのだ。

しかし、この相互作用の弱さこそが、重力波が重大な意味をもつ理由でもある。

・なぜ重要か

先日スーパーカミオカンデでのニュートリノ観測に関する研究で梶田隆章教授にノーベル賞が与えられたが、元々カミオカンデ、スーパーカミオカンデの研究が評価される理由は、ニュートリノもまた透過力が強く検出が困難だからである。

透過力が強いということは、例えば恒星中心部などで発生したニュートリノがそのまま宇宙空間に飛び出してくる。それを検出することで、電磁波観測などでは得られない情報を得ることが出来るということだ。

重力波はそれよりもまた相互作用が弱い。数字にしてニュートリノよりも18桁も小さい。その分、また大きな情報を失われないまま運んでくる。

したがって、重力波の検出が可能になれば、宇宙の新たな観測法が確立されることになり、これまで得られなかった貴重な情報が得られることになる。地球に到達し検出できるほど強い重力波を発生させるのは、中性子星やブラックホールなどの巨大な質量をもつ物体であり、未だ謎の多いこれらの物体に関する研究の発展が望まれる。

また、量子論的には、これらの波は粒子としての性質も併せ持つ。重力を伝播する粒子であるグラヴィトン(重力子)も電磁気力を伝播する粒子である光子同様質量を持たず、重力も電磁気力と同じく光速で伝播すると考えられているが、グラヴィトンがわずかな質量を持つ可能性も存在している。その場合、伝播速度は光速をしたまわる。実際に観測が可能になれば、そのあたりの事実も明らかとなる。

それに加え、宇宙誕生直後の急激膨張の際に生じた「原始重力波」を観測出来れば、インフレーション理論と呼ばれる初期宇宙の急激膨張に関する理論を検証することも出来ると考えられており、宇宙誕生の謎の解明にもつながると期待されている。

【物理】『インフレーション:A compact guide to big science』BBC 2014/3/17

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