【似非科学】『似非科学や陰謀論は科学に対する犠牲者の無い罪では済まされない』 Phys.org 2015/6/4

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Pseudoscience and conspiracy theory are not victimless crimes against science
June 4, 2015 3.19pm AEST
http://phys.org/news/2015-06-pseudoscience-conspiracy-theory-victimless-crimes.html

反ワクチン運動のニュース、学校で創造論を科学として教えることの要求、奇妙なダイエットの健康効果の怪しげな主張は、一部の人は完全に科学的な方法を忘れてしまったのか、あるいは放棄してしまったのではないかと考えさせられるのに十分である。

天文学者カール・セーガンはかつてこう述べている。

すべての国では、子どもたちに科学的方法と権利章典の道理を教えなければならない。それにより、一定の良識や謙虚さ、そして共同体の精神が芽生えるだろう。悪霊に憑かれたこの世界で、立ち込める暗闇と我々の間に立ちはだかってくれるのはそれだけかも知れない。


教育や生活水準の進歩にもかかわらず、多くの人にとってこの世界は恐ろしい場所に見えているようだ。化学物質に満たされた空、我々を誘拐しようとしているエイリアン、そして政府や企業の陰謀。スティーヴン・ホーキングがそっけなく述べたように「もし政府が隠蔽に関与しているとしたら、彼らは他のどんな仕事よりもはるかに上手くやっている」

【認知・教育】『なぜ人々は陰謀論を信じてしまうのか』Scientific American - マイケル・シャーマー

「代替」科学にはどんな害があるか

癌治療の代替薬を適用することの害は何だろうか?自分の子供に予防接種していないことを、なぜ他人が気にしなければならないのだろうか?このような判断は、大抵の場合、科学の営みに関する理解不足に基づいている。そしてほとんどの場合誰かの商業的利益によって誘導されている。

例えば、Food Babeとして知られる米国のブロガー、バニ・ハリは、食品の研究と問題の曝露を行っていると(「自然」食品会社から後援を受けながら)主張している。マイクロ波の影響を研究における彼女の深い研究の結論はこうだ:

電子レンジにかけられた水は、「サタン」や「ヒトラー」という言葉に繰り返しさらされた水と、同じ物理的な構造を生成した。


実際、科学に権威というものはない。たかだか専門家というものがいるだけだが、彼らの意見でさえ誰でも挑戦することができる ― その議論を裏付ける証拠がある限り。

一部の人々が「権威」とされ、彼らの風変わりな主張が信じられているとき、何百万人もの人々がそれを受け取る可能性のあるその後の意思決定は、彼らを傷つけ、人生に早すぎる終わりをもたらす可能性すらある。

それが特異に聞こえるというなら、オーストラリアの2人の「ウェルネス」ブロガーについて考えてみてほしい。ベル・ギブソンは、(後に完全なでっちあげであったと認めた架空の)癌との戦いで、「自然な」武器として、自然食品レシピと(本やスマートフォンアプリとして利用可能な)代替療法を宣伝した。あるいは、ウェルネス戦士ジェシカ・アインスカウは、彼女のブログで提唱していた似非科学「自然治癒力」によって自らの肉腫の進行を抑えることが出来ず、2015年2月に死亡した。

癌は患者やその家族にとってはとても恐ろしいものだ。これらの「ウェルネス」ブロガーの一部が行っていることは、単なる見当違いにせよ、個人的な利益のためにやっていることであるにせよ、病に苦しむ人々や、病により愛する人を失ったものたちに対する侮辱なだけでなく、全く無責任な行為である。

同様に、反ワクチン運動の科学に関する誤情報や無知は、自分たちの子供を危険にさらすだけでなく、他の人たちの生活にも影響を与える。

【医療・認知】『MMRワクチンと自閉症に関連性なし,95,000人の子を対象とした研究結果』ScienceAlert 2015/4/22

似非科学の流布は人を殺す。それこそが、我々がもっと科学的手法の理解を広め、途方もない主張に対し懐疑主義的態度を取るよう勧める必要がある理由だ。

悪霊にさいなまれる世界

しかし、健全な懐疑心のレンズを通して、自らの周りの世界を批判的に分析する方法を子供に教える代わりに、教育システムは教えられたことを受け入れるよう促す権威からの議論に基づいている。これは時間が経つにつれて、科学的に訓練されたものと他のものとの間の、世の中に対する見方やアプローチにおける大きなギャップを生み出す科学的なアプローチに関する深い無知に発展することがある。そのギャップに不信やペテン師、そして陰謀論が侵入してくる。

【認知】『知能が低いほど深遠な響きのデタラメ(bullshit)や陰謀論、スピリチュアルなどを信じやすい』ScienceAlert 2015/12/3

我々の世界は科学とテクノロジーに密接に結びついているが、とても少数の者しか科学やテクノロジーについて理解していない。これは災害のレシピとなる。セーガンの著書『悪霊にさいなまれる世界―「知の闇を照らす灯」としての科学 』の出版から20年、未だこの状況は改善されていない。

人によっては大学教育、もしくは科学の学位なしで科学的結果の解釈を理解することは困難となりうる。ある科学分野に属するものでも、さらなる進展のために要求される専門性の高さが原因で、他の分野の発展を理解するのに苦労することがある。この専門性をマスターすることは、限られた時間しかもたない我々に、長い時間を費やすことを必要とする。数学や力学、発明から哲学、政治、解剖学や医学まで専門としたダ・ヴィンチやライプニッツなどの万能の天才が生きた時代は遠い昔だ。

ギャップを埋める

幸運なことに、科学者になるためにすべてを知っている必要はない。また科学的思考についても同様だ。実際、科学的思考とは最も賢明なものとは、自分が何も知らないということを知っているものであるというソクラテスの言葉の通りである。「知らないことは恥ではない。非合理的な思考やそれに伴う行動によって、無知によって残された空白を埋めるとき問題が生じる」とニール・ドグラース・タイソンも述べている。

唯一科学的思考に求められるものは、日常生活の中で遭遇するものに科学的方法を適用する方法を学ぶことだ。科学とは我々の持つ唯一の真実へのアプローチであり、現実の世界に対する我々のアイディアを確かめる自己批判に接続された誤謬訂正機械である。そしてその信憑性の証明は、あなたがこれを読んでいるスクリーンの裏にある科学原理から、それを製造するための工程や素材、そして動作を可能にする電気まであなたの周りにあるすべてである。これが科学者たちが他者に教えるべきことだ。

科学は完璧ではないかもしれないが、人類が自身や周りの世界を理解するために発展させた最良のものである。科学的方法の理解によって、世界は突如恐れるべき場所ではないことが明らかにされる。カール・セーガンは「神秘は、我々がでっちあげなくても十分そこに存在している」とも残している。

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