【生物】『リチャード・ドーキンス:ヒトと他の動物との境界はいかに曖昧か』 ガーディアン 2009/1/4

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Richard Dawkins: How would you feel about a half-human half-chimp hybrid?
James Randerson
http://www.theguardian.com/science/blog/2009/jan/02/richard-dawkins-chimpanzee-hybrid

Edge.orgによる世界有数の思想家に向けられたニューイヤーチャレンジへの遅めの返答として、リチャード・ドーキンス教授は彼のエントリを提出した。 Edge.orgは、科学者、哲学者、芸術家、ジャーナリストに問うた「何もかもを変えてしまうものとは何であるか?」と。

『利己的な遺伝子』や『神は妄想である』の著者ドーキンスは、おそらく研究室におけるキメラもしくは人間とチンパンジーの間での交雑の成功によってなされる、人間と動物の間の境界の破壊の効果について考えをめぐらせた。

これが彼の回答である:

種の壁を破る

私たちの倫理や政治において、人間と '動物'の間の境界は絶対的であるということが、疑問や真剣な議論なしに大きく想定されている。プロライフ(※)をほんの一例とすると、それは中絶や安楽死への抗議などの倫理的問題すべてに関連する強力な政治的バッジとなる。だがそれが実際に意味しているのは、プロ-ヒューマン-ライフ(ヒトの命の尊重)である。中絶クリニックの爆撃犯はビーガンであるとは知られてないし、ローマカトリック教徒も、苦しむのペットの「安楽死」に対し特に抵抗を示していない。多くの混乱した人々の心には、何の神経も持っておらず、苦しむことができない人間の単細胞の受精卵は、それが「人間」であるという理由だけで限りなく神聖とされる。他のどんな細胞も、このような高貴な地位を享受することはない。

(※訳注)プロライフ―中絶を選択する自由を尊重する立場であるプロチョイスに対し、生命を尊重し中絶に反対すると主張する立場。欧米では、主にキリスト教原理主義的思想に基づいており、中絶医師を殺害するなどの事件も起こっている。

しかし、このような「本質主義」は深く非進化論的である。もし今まで存在していたすべての動物が活発に過ごす天国が存在したとしたら、我々はすべての種とその他のすべての種の間に異種交配の連続体を見つけることができるだろう。たとえば、チンパンジーと交配できるある個体と、また別の個体と…と、この場合そう多くはないであろうギャップを埋めていけば、ヒトとチンパンジーを交配させることができる。

私たちは、ヒトとイノシシやカンガルーやナマズなどとをつなぐ、より長いが切れ目のない交配の鎖を構築することもできる。これは、思弁的な推測の問題ではなく、進化の事実から必然的に引き出される事実なのである。理論的には我々はこのことを理解している。しかし、以下のような実践的な事柄になると、何が変わるのだろう

1.絶滅したとされるホモエレクトスやアウストラロピテクスなどの人類の生き残りが発見されたとしたら。イエティの愛好家はいても、私はこのことが起こるとは考えていない。サバンナに生息する霊長類を見落とすことはありえないほど、世界は十分に探索されている。ホモ・フローレシエンシスでさえ、17,000年前に絶滅している。しかしもしそれが起こった場合、それはすべてを変えるだろう。

2.人間とチンパンジー間の交配の成功。そのハイブリッドがラバのように不妊であったとしても、社会に広まる衝撃波は有益となるだろう。生物学者たちが、この可能性を想像できる限り最も不道徳な科学的実験としている理由はここにある:それはすべてを変えるからだ!それは不可能であると排除することはできない、驚くべきこととなる。

3.人間とチンパンジーそれぞれのほぼ同数の細胞からなる実験室でのキメラ。ヒトとマウスの細胞のキメラは、今当然のこととして実験室で構成されているが、彼らは長くは生存しない。ところで、種差別主義者倫理の別の例は、現在ヒトの細胞をある割合で含むマウスの胚について騒いでいることだ。 「より厳格な研究ルールができる前には、キメラをどれほど人間として扱うべきなのか?」これまでのところキメラの誕生には程遠いため、この質問は単に神学的で、人間の脳に似たものは何もない。しかし、思い切って倫理学者のお気に入りの滑りやすい坂を下るため、50%のヒトの細胞と50%のチンパンジー細胞でキメラを生成し成体まで成長させたら、それはすべてを変えるだろう。おそらくそれが起こるのではないだろうか?

4.ヒトとチンパンジーのゲノムは、現在すべて知られている。様々な割合の中間のゲノムは、紙の上(理論上)では可能だ。紙から肉や血に移すには、おそらく一部の読者の存命中には主流になるだろう発生学的な技術を必要とする。私はそれが実現されるだろうと思う。我々とチンパンジーの共通の祖先の近似的再現に命が吹き込まれるだろう。この再現された「祖先」と現代人との間の中間ゲノムは、胚に挿入されれば、生まれ変わったアウストラロピテクスのようなものに成長するだろう。そしてそれは(あえて言う必要があるだろうか?)すべてを変える。

私は、もし実現した場合すべてを変えることになるだろう4つの可能性を挙げてみた。私はそれらのいずれかが実現してほしいと願っていると言ってるのではない。それはさらなる思考を必要とする。だが正直なことを言えば、私はこれまで問われずに来たことを問題とすることを余儀なくされたときはいつでも、ぞくぞくするほど楽しいと感じる。

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